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研究内容

概要

地球環境への意識の高まりや電力自由化の流れから、太陽光発電や風力発電に代表される再生可能エネルギーの導入拡大が見込まれており、これまでの電力系統をスマートグリッドとして展開していくことが大きなテーマとなっています。この中で、電気抵抗をほぼ無視できる形で既存材料の100倍以上の電流密度での通電が可能な超伝導電力機器は、電力輸送の高効率化、電力貯蔵機能や限流機能による電力系統運用自由度の拡大等により、次世代電力系統のキーコンポーネントになると期待されています。そこで本研究室では、そのような超伝導機器の材料となる超伝導線材の品質管理、機器の設計や状態監視、さらには電力系統導入時の挙動解明まで、超伝導電力機器の応用展開の鍵となる基盤的評価技術の開発を通じ、次世代エネルギー社会の実現を目指しています。

テーマ①:超伝導材料・線材の高度評価技術の開発

超伝導機器の材料となるものは、主に超伝導材料を電線形状に加工した超伝導線材となります。換言すれば、超伝導線材の特性制限因子の解明による特性向上とその品質管理は、そのまま超伝導機器の性能向上と信頼性確保につながります。そこで本テーマでは、磁気顕微鏡を中心とする高度な評価技術により、超伝導線材の特性制限因子の解明と品質管理技術の開発に取り組んでいます。

テーマ②:超伝導機器の設計・診断技術の開発

超伝導機器の設計には、超伝導線材の特性を正確に考慮する必要がありますが、特に高温超伝導線材ではその特性が温度・磁界・磁界印加角度・機械的ひずみに依存するなど大変複雑であり、その性能を最大限に発揮させるためには高度な最適設計が必要になります。そこで本テーマでは、上記線材特性を広範な条件下で定量表現し、その特性を反映した高度解析技術をを通じて、遺伝的アルゴリズムや機械学習を用いた超伝導機器の設計技術の開発を行っています。また、このような解析技術を、超伝導機器の診断技術の開発にまで展開しています。

テーマ③:超伝導電力システム応用技術の開発

超伝導電力機器の実導入に際しては、電力系統導入時の挙動を事前に正確に把握しておく必要があります。一方、いきなり実規模機器を製作して電力系統に導入することはリスクも費用も極めて高く、小型プロトタイプの段階で超伝導機器ならではの効果や挙動を模擬したいというニーズがあります。そこで本テーマでは、任意の電力系統を模擬することができるリアルタイムデジタルシミュレータ(RTDS)を用いて、小型プロトタイプのハードウェア閉ループ試験(HILS)を行えるシステムを構築しています。これにより、実系統導入時の挙動・機能を確認しながら、超伝導電力機器の設計・製作・最適導入形態の検討・実証が行えます。例えば、当研究室で提案している特殊な超伝導ケーブルとその革新的な運用によれば、電力系統自体にエネルギー貯蔵機能が発現し、再生可能エネルギーの大量利用の決め手となる次世代エネルギーネットワークとなることの模擬実証にも成功しています。